聴樂徒然

未知の流行病が蔓延し世情が揺れ動く昨今いかがお過ごしですか、世界中が真空地帯に落ちてしまったようで心晴れない日々の暮らし、このような時こそ音楽は良い友です。

「オーディオやってて良かったわー」な、お方も少なからず居られます。

「明けない夜は無い」どうかご自愛ください。

2008年3月無謀にも Home Cinema and Audio Kyoto として京都大阪への通勤圏にある Bed town 八幡市に開業、途中故あって Audio Amigo Kyoto への名称変更を経て、衰退著しい業種ながら13年もの長きをお客様や取引先に助けていただきながらどうにかこうにか保ちこたえてこれたことに感慨を禁じえません。このような混沌のご時世ですが、これからも変わらぬご愛顧のほどよろしくお願いいたします。

ここらで一度オーディオアミーゴ京都の成り立ちと、図らずもオーディオショップの店主になってしまった愚人の彷徨ぶりと近況を。

今を辿ること20年前、私は諸般の事情により当時暮らしていた RC 構造の共同住宅から木造の日本家屋に引越しすることになりました。

当時は只の音楽好きの手慰みのようなオーディオで日々楽しんでおりました。マンション住まいで多少の我慢は必要でしたが、自分としては「良いんじゃない」程度には鳴っていたと思います、ところが一般的な木造建築の日本家屋に引っ越してからと云うもの、思いもかけない散々な状態に陥ってしまいました。それまで聴こえていた音楽を失い悶々とする日々、夢の桃源郷は遠のくばかり、辟易する現実に救いを求めるように機材漁りに逃げていました。

喘ぎのたうち回っていた折もおり、たまたま RC 構造の仕事場が移動(部屋替え)することになり、これもたまたま幸いにも端部屋の伽藍堂と云う、今にして思えば誠に結構な場所に行き当たったのでした。

新しい仕事場に移動した頃には丁度仕事の内容にも変化があり、スペースに余裕が出来たので木造住宅でのオーディオに手を焼いていた私は、渡りに船とばかりに手持ちの機材を持ち込むことにしました。

Soft Shell → Hard Shell  広さは同じようなものだったけれどあら不思議、同じシステムが鳴っているとは思えないほどあっさりと思い通りの音が聴けるようになりました。おまけに ZANDEN Model 1000 を手に入れたことにより一層オーディオの魅力に取り憑かれ、熱量が弥増したことは覚えています。

好条件のスペースを手に入れて暫くはウキウキ気分で、ルームアコースティックも DIY でこそこそとやってはいたものの所詮は素人の手慰み、限界はすぐに来てしまいます。もはや自力でこれ以上のステップアップは無理と判断し、今度はプロの力を借りてリスニングスペースを作ることを思い立ちました。

そう、、、全く軽い考えで。

ところがいざ設計を依頼してシミュレーションを繰り返していると、中途半端な材料と作業では自分が思い描くような環境は作り出せそうもないことを知りました。

ただの遊び場としてこのまま「エエ加減」な所で手を打ってお茶を濁しておくのが賢明、・・なことは火を見るよりも明らかでした。

でも当時の私、調子に乗ってたんでしょうね。やることにしてしまった・・・・・orz

そして1ヶ月の工期を見込んで着工してからも逐次新しい素材や用法が現れ、都度変更を加えながらの工事が災いして作業は遅々として進まず、いつになったら落ち着いて音楽三昧が出来るのやらと思うも、そこからが新たな試練の始まりでした。

私のプライベートなリスニングルーム計画は、オーディオが自分の仕事になることなど露ほども考えたことのなかった道楽事。其れが途中から何処でどう間違ったのかザンデンオーディオシステムのショールームへと転針して行くのは、何より絶大の信頼を置いていたザンデンオーディオシステムの意向と、当時使用していた機材がほぼ同社製品であったこと、おまけにお調子者とが加わったことが更なる追い風を吹かせていたのは確かです。

どう考えてもど素人が浮かれて調子づいてしまった挙句の暴走でしたが、決めてしまった以上何としてでも形をつける以外に道はありませんでした。

あがきましたよー、ZANDEN の音を細大漏らさず伝える為に着工してからオープンまでにかかった期間は8ヶ月、終盤に差し掛かる頃にはザンデン関係者総動員でシステムの作り込みや調整の日々が続きます、オーディオ歴が長いだけの店主本人は辛くも楽しい経験の日々を送れることにはなったのですが。

1)序章

もうすぐ4月と云う頃、なんとか開業にこぎつけおっかなびっくりの営業開始です、 ZANDEN なんて日本国内で全く知名度のないブランドのオンリーショップ、閑古鳥と過ごすことが日常化してしまい一人音楽三昧。そんな過酷な状況にも人は慣れてしまうものです、来客があると何故かオロオロする始末、嗚呼。

オーディオアミーゴ京都への名称変更後も青息吐息での営業が続くなか、石清水や音羽などオリジナルアイテムを開発しながら日々を過ごしているうち、徐々にではありますがオーディオショップ風味が身に付いたのでしょう、少しづつ認知していただけている感覚を持てるようになりました。

のらりくらりと営業を続ける中 2016年8月突如として事件が発生します。なんと自慢の Quad ESL 2905 が突如昇天してしまったのです。当然輸入代理店であるロッキーインターナショナルに修理を打診してみるも、後継機の ESL 2912 を勧めたいらしくどうにも腰が重いうえに話が通じず、とうとうしびれが切れてしまい最早これまでと  ESL を見限ることになりました。けれども開業当初から当店の顔として重責を担っていたESL 2905 を失ったダメージは想像以上に大きく、次期リファレンススピーカー選びは難航を極めました。

事は急を要する、否、早くてもベストでなければ意味がない、営業を続けながらこの相反する思いの中で新旧取り混ぜて目星を付けては試聴を繰り返しましたが、ESL の後釜に相応しいスピーカーは見つかりませんでした。

ところが思いもよらないところに伏兵は待ち受けているものです、ZANDEN Model 8120 をリファレンスに最終仕様が決定された DIATONE DS-47NB の発売決定、メーカーのデモンストレーションでも自店での試聴会でも前任の ESL にも勝るパフォーマンスを披露してくれ呆気なくエトワール認定、2017年の12月初旬凡そ1年4ヶ月のブランクを経て待望の旗艦が我が手元にやって来ました。

やっとそれで店内は平静を取り戻しましたが、ESL-2905 に合わせていたクラシックラインの Model 3000 と Model 9600 のアンプシステムを、新旗艦を迎えた勢いで Model 3100 と Model 8120 のモダンラインのペアに変更しました。その他アイソレーションシステムを組み込んだオーディオラックやインシュレーターの音羽・蕚等当店のオリジナルアイテムが加わりましたが、機材は PC Audio 用一式が増えたくらいで部屋の作りやレイアウトは見慣れた景色のままです。

出て来る音は言わずもがな、これまで通り全く私好みの不満などありようも無い ZANDEN SOUND です。

とまあこれが当店開設から現在までのアウトラインです。

 

ここから話題をリスニングルームに於けるエージングに話題を変えましょう。

当店試聴室は開設以来部屋の構成そのものに変化はありません、プリアンプとパワーアンプの更新やフォノイコライザー のアップデートはありましたが、基本システムはこれまで通りザンデンオーディオシステム製で構成されていることに変わりありません。

ところがトーンポリシーこそ以前と変わりませんが、その聴こえ方が厳しいものから耳馴染みの良い方向へと変化しました。メインシステムやスピーカーまでもが変わったのだからとか、単純に「耳が慣れただけよ」なら「そりゃそうだわな」な話なんですが、進化と断言できるその変わり様は、「最新の機器に変更したお陰ですよ」と言い切ってしまえる程単純じゃありませんでした。

オープン当初、来る人来る人に「この部屋響き無さすぎ」「耳が変な感じ」「無響室か」などと言われることが多く、リスニングには不向きだという人まで現れる始末でした。

しかしそれらの反応は私にとって十分織り込み済みでした、所謂オーディオに一家言ある人は自分独自の音が作れる響の良い部屋が好き、何てね。まあ多分にメディアの影響。

それら多数派から見れば私は天邪鬼なのでしょうね「聴こえる音は全てソフトに入っている、リスニングルームでそれ以外の音や響きを付け足すことはしない。」と当時も今も私の考えは変わっていません、本来響く部屋は演奏家の為のものなのですから。

そんな私の思いを反映して作り上げた当店のリスニングルームは残響と反響は極力抑える作りではありますが、話し声のよく通るいい作りだと今でも自賛しています。

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そのようにして調えたこの部屋ですが、竣工当初全ての音が明瞭に聴こえるけれど鼓膜には少し減圧感が気になる状態ではありました。今改めてそのことに気を向けると当時確かに有った減圧感が、今ではすっかり無くなっていました。その効用かどうかは定かではありませんが、音抜けが格段に良くなりリスニングポイントが以前よりブロードになっています。

開業以来リファレンススピーカーを始め殆どの機器がアップデートされているので一概に言い切れるものではありませんが、ここに至って気付いた音の変化は部屋の馴染みの影響じゃないかなと思っています。

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リスニングルームの項にも記していますが、今一度試聴室の概要を書いておきます。

店内の内装材は正面の出入り口と窓を除いて透過性のある繊維製品で仕上げられ、駆体との間に充填された吸音材がそのまま効果を発揮できるようになっています。また側面も同様の考え方から木材を不等間隔に配置して壁面の吸音材を生かす構造になっています。

上記のように大量に使用された吸音材はそれぞれ特性の異なるものが組み合わされ、ほぼ全帯域にわたり吸音効果を発揮しています。質・量共に満遍なく配置された吸音材のおかげでウルトラデッドなリスニングルームに仕上がりました。

ここで音が変わったことに話を戻します。

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諄いようですがこの13年間システムの変更はありましたが、部屋自体は構造は勿論表面材にも一切手を加えていません、それなのに音の聴こえ方が変わりました。長年の使用でカーペットの毛足が寝たこと吸音材が埃を吸い込んで吸音効果が薄れた、木材が乾燥して反響が増大した。単純に思いつくのはこんなとこです、果たしてこれらがどの程度関わっているのかはわかりませんが。

まあ人はどうあれ私としては今の音とても気に入っているで今更何もする気にはなれません、でもまあ終わり良ければすべて良しでしょうか。

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お後がよろしいようで。

 

2021/02/06