1)Prologue

円筒式蓄音機が発明されて以来音声を記録するのみならず、録音された音楽を家庭で聴くと云うオーディオが生まれました。それ以来メディアとハードウェアは次々と新しいものが生みだされ、数々の変遷を重ねて来ましたが全てが新しいものに取って代わられてしまったわけではなく無く、古くからのものも現役として音楽を奏で続けています。何故なら私達がそれぞれの時代に記録された音楽に魅了され、その最良の音源として認め求めているからに他なりません。

オーディオを始めるきっかけは人により異なるでしょうが、気に入った場所で気の向くままに好きな音楽を聴きたいと云う想いからが大半を占めていると推測します。そうして始めたオーディオに長く深く親しんで行く過程の中で、独自の流儀や作法といったものを会得し、自ら音楽を録音する・機材やメディアを換えて音楽の聴こえ方の変化を知る・音源と同時代の機材での再生を目指す・常に最新の機材と音源で望む・若しくは市販の機器では納得出来ずに改造や自作をする方等々、それぞれ手法は違えど音楽の真髄に迫る為の努力を惜しまず、むしろそれも楽しみと捉え音楽とオーディオを自らのものとされています。音そのものにこだわりを持ち音を創るオーディオを実践されている方も居られますが、此処では音楽を聴くと云う行為のオーディオに焦点を合わせて話を進めたいと思います。

1)序章

オーディオが生まれてから現在にいたる迄、オーディオコンポーネントは用途に応じて多種多様な物が世に送り出されて来ました。機器の高性能化を追い求める結果大きく重くなってしまった部分だけがクローズアップされ、それに便乗する形で兎に角重い物の方が音が良いとの説が一人歩きしてそれがそのまま今日迄尾を引いています。オーディオコンポーネントにはそのような側面があることも否定しませんが、商売上のギミックとしての部分が大きな割合を占めていたのは想像に難くありません。オーディオコンポーネント全体を見渡せば、本当に良い物は重さや大きさなどの一元的な視点で成り立っているのでは無く、夫々の機器に最適な重さ大きさが有り、重く作る・軽く作る・大きく作る・小さく作るはひとえに制作者のセンスと才能に委ねられているのが良く分かります。昔を知った上での自由な発想こそが、日々進歩した本物の製品を生み出して行くのだと思います。

これ迄の日本のオーディオを取り巻く状況を振り返ってみると、色々なオーディオコンポーネントがメーカー側の「今回採用された新機軸がこれまでの製品の性能を尽く凌駕する」と云った謳い文句で華々しく登場し、それが売れるとなると他のメーカーもそれに追随し似た様な製品ばかりが巷に溢れかえって良くも悪くも時代を背景にした流行廃りを繰り返しました。更に発売から時間が経ちより高品質なものにその座を追われ一度は姿を消したものが、ノスタルジーや過去の憧憬を刺激するような方法で、さも高性能な逸品であったかの様な恣意的な情報の元にインターネットオークション等に出品され、正しい選択を増々難しくしています。けれど賢明なユーザーはこれ迄に得た経験と豊かな感性で、玉石混淆の数多有るオーディオコンポーネントの中から優れたものだけを選び出し手元に置いています。

生涯の趣味として真摯にオーディオに取り組まれている方々の多くは、お気に入りのソフトをルームアコースティックの調えられたリスニングルームで、十全にセットアップされたオーディオコンポーネントを用いて音楽をストレス無く心ゆくまで楽しまれています。他方、機器類に寄せる情熱程にはルームアコースティックやソフトのコンディションには関心が薄いまま、求める音に出会えず音楽と共に過ごす時間を持てないまま悶々と過ごされる方もいらっしゃいます。度重なるオーディオシステムの入れ替えによっても満たされる事の無い思いは、ほぼリスニングルームにその原因が認められます。その解消にはルームアコースティックや電界強度の見直し等、問題箇所の改善を図るより他に方法はありません。豊かなミュージックライフを手に入れる為にも、是非快適な音響空間作りに取り組んでいただきたいと思います。

 LP レコードや CD のプレイバックに際して、ソースが同じであるにもかかわらずレーベルごとに音の傾向が異なるのは何故か。同じレーベルなのに製造国よって音質が異なるのは何故か等その不思議にメスを入れて、的確な機材の選択をはじめとしてハードとソフトの両面からの解決を図ります。当店では室内環境の整備・オーディオシステムのセットアップ・ソフトのメンテナンスを中心に、ストレス無く音楽を楽しんでいただけるオーディオを提供したいと考えています。