続 Monophonic Phono Equalizer

前回の Monophonic Phono Equalizer から雑事に追われて随分と間が空いてしまいました。タイトなスケジュールの間隙を縫ってようやく 完成した Zanden Audio Sistem の仮称 Model 110 Prototype モノーラルフォノイコライザーの試聴結果を報告したいと思います。

先ずは今回完成したプロトタイプの大まかなプロフィールを紹介しましょう。

イコライザー本体はプレーバックの正確性を確保する為に Zanden Audio Sistem の採用するフィルターの基本である LCR 型を採用しています。それにより過去イコライジングカーブの検証に使用されたであろう NF 型やCR 型といった回路を用いるフォノイコライザーとは違い、正確で安定したプレーバックを常に行えると云う最大のメリットを手にすることが出来ます。

ステレオフォノイコライザーの Model 120 と同様イコライジングサーキットは LCR のディスクリートで仕上げていますが、バッファーにはオペアンプを採用し省電力・低コスト化を実現、3系統の入力は1つのMM 用と昇圧トランスで受ける2つの MC High / Low を備えています。それらの入力はマイコン制御のリレーにより、それぞれの入力を MC/High – MC/Low – MM に切り替えが可能です、勿論極性の切り替えも忘れてはいません。そして肝心のターンオーバーは18・ロールオフは10の設定を持ち、それぞれが単独に切り替え可能になっています。

スタイルは Model 120 Stereo Phonoiqualizer と同じく Zanden Audio Sistem の新たなラインの流れを汲み、本体はステンレス製フロントパネルはフロストのアクリルという構成でとても美しい仕上がりです。電源は別体で用意され、これも本体同様美しいステンレスの筐体を纏っています。現在製品化の予定はありませんが、もしも将来市販することになっても殆どこのままの姿になるだろうと思います。

今回の試聴の目的は、はたしてモノーラルレコードのイコライジングカーブはいくつあれば足りるのか。であります、それを確かめるべく 18X10 通りの組み合わせ可能なイコライザーを製作して臨みました。

試聴機のラインナップは次の通りです。

カートリッジ       Audhio Technica  AT 33 MONO      (LP)                                                                                  Audhio Technica AT-MONO3/SP (SP)

トーンアーム     Tri Planar                 (LP)                                                                                                        DENON DA-302   (SP)

レコードプレーヤー  石清水(Technics SP-10)(LP)                                                                                           松下通信工業  FR-953     (SP)

フォノイコライザー  Zanden Model 110 Prototype

プリアンプ      Zanden Model 3000

パワーアンプ     Zanden Model 9600

スピーカー      QUAD ESL 2905

私はこれまでも Model 1200 Mk Ⅱ の5つのイコライジングカーブと極性切り替えを使用して、ステレオレコードのみならずモノーラルレコードも楽しんでいました。最近ではそれに加えて電気録音の SP(78)レコードも同じ装置で聴いて、それぞれが満足の出来る水準のプレーバックであることに感心していました。

現在当店が採っているプレーバックの方法が、今回の試聴で試されることになります。今迄の方法で正確にモノーラルレコードに入っている情報を受け取ることが出来ていたのかどうか審判され、結果、今後のモノーラルレコード再生は方向転換を図らざるをえなくなる可能性もありました。

ところが試聴に入って直ぐに、我々の予想を遥かに越えたあまりにもあっけない結果が待っていました。試聴に際してはレーベルを数多く用意したのですが、そのどれもがいくら聴き返してもターンオーバー・ロールオフ共に一部の決まったポジションに集中してしまい、過去の資料に記されている微妙に異なる多くのポジションの必要性は感じられませんでした。今回の試聴で確認されたイコライジングカーブの数値は尽く Zanden Audio Sistem がステレオフォノイコライザーで提唱して来た5つのイコライジングカーブに集約されていたのです。さらに驚くべきことにそれは LP に限ったことではなくて SP(78)にも同様のことが起こり、その違いはアコースティック録音用のターンオーバー・ロールオフのフラットポジションの有無だけでした。

今回このモノーラル用フォノイコライザープロトタイプを製作するにあたり再度調べた資料には、各レーベル毎に事細かな数値で、それも年代による変遷をも含め数多くのイコライジングカーブが記載されていました。それにも拘らずこのような結果になったのは、そもそも過去の検証に使用された機器が、それも肝心のフォノイコライザーにLCR 型イコライジングサーキットと同水準の再現性を持たない NF や CR 型を使用していたことで、正確なイコライジングカーブの再現がなされていなかったことによる聴き取りの曖昧さが想像されます。                                    *NF や CR 型は周波数的にイコライジングカーブの再現は可能ですが、位相(時間軸)の整合性が取れないことでカーブの違いによる再現の正確な聴き比べがし難くなります。*

ここまではっきりした結果をが出たことは予想外でしたが、今までレーベルにマッチするイコライジングカーブを追求してきた私どもにとっては嬉しい誤算とも云え、これまでのイコライジングカーブについての考えは間違っていなかったことの証左を得たと考えています。これらのことからアナログレコードのプレーバックに真剣に取り組もうとお考えの方は、Zanden Model 1200 ・Model 1300 ・Model 120 の3種類の フォノイコライザーの中からお選びいただくことにより、最先端のアナログサウンドを手に入れることが可能になります。 SP(78)レコードにつきましてもアコースティック録音以外は正確なプレーバックが可能になります。

 

2014/10/18