14)Reference speaker
2017年12月6日、当試聴室のリファレンススピーカーが Quad Esl 2905 から DIATONE DS-4NB70 に交代しました。
2016年9月のある日 Quad Esl 2905 から不穏な音が右側に使用している1台から出始め、修理か代替機への交換かと紆余曲折を経てこの度先代リファレンススピーカーを上回るパフォーマンスを示した DS-4NB70 がその座につく事になりました。
Quad Esl 2905 の名誉の為に敢えて記しますが、今回のリファレンススピーカー交代は代理店の方針に?を感じたことに端を発しており、けっして Quad Esl 2905 の能力が完全に色あせてしまった訳では無いことを申し添えておきます。
このスピーカーの詳細は Web 上に色々出ているので今ここでは省かせていただきますが、概要は三菱電機を代表する名門ブランド「DIATONE」創立70周年記念を迎え、一時休止していた活動の復活に向けて開発が決まった、言わば Revival DIATONE のシンボルの様なスピーカーです。
此れより DS-4NB70 が当試聴室の常設リファレンススピーカーとして皆様をお迎えいたします。
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以下は2016年9月迄のリファレンススピーカーに関しての記事になります。
スピーカーにはダイレクトラジエーター型・ホーン型・プレーナー型等種々の形態があり、それらに様々な方式のドライバーを組み合わせたものが数限りなく製造されています。
現行の Quad ESL 2912 の前モデルにあたる Quad ESL 2905 が当店のリファレンススピーカーです。他にもリアルサイズの再現が可能なスピーカーは存在しますが、静電型スピーカー集大成でもある本機は演奏のリアリティーが表現出来る数少ないスピーカーの一つです。それを可能にする大きな理由は、ESL の特徴である発音機構に永久磁石を持たず発音体の構造上出て来る音の位相が全て揃っていることです。私達が普段耳にする自然の音や人の声また楽器の生の音に位相のずれは皆無であり、最近ではその問題に踏み込んで開発されたスピーカーも見られる様になりました。けれども未だ旧来を踏襲したスピーカーが多数を占めていて、それらでは到達し得ない世界を提示してくれる稀な存在が Quad ESL 2905 であり、あらゆる点で一頭地を抜く存在です。
このスピーカーは人の音声領域は勿論楽曲の最低域から最高域・pppからfffまで、時間軸のぶれない演奏が記録された時そのままにトーンやハーモニーは云うに及ばず正確に展開されるサウンドステージとピンポイントに定位するサウンドイメージを創り出し、まさに音楽を細大漏らさず再現してくれる希有なスピーカーです。その聴き心地は極上で決して誇張される事の無い自然な音色に因るハーモニーと、現実と見紛うエネルギー感によりその身をすぐに音楽に没入させてくれ地平の彼方迄続く様な至福の時を与えてくれます。
従来の Quad ESL(Electro Static Loudspeaker)は大入力への耐性が低く大音量を苦手としていました、また日本家屋の構造と広さや使用者の不慣れが重なり扱い辛く脆弱だと云うネガティブな情報だけが一人歩きをしてきました。多くの方がそのイメージに振り回された風評を元に実体験が無いまま負の評価を下していました。そうした中着実に開発を進めていた Quad から ESL 発売70周年を記念して発表されたこの Quad ESL 2905 は 、ESL の集大成として耐入力を400W に引き上げフレームの大幅な強化と低域専用の発音パネルの追加等旧来弱点とされていたところを全てをブラッシュアップし、あらゆる音楽ソースに対応可能な静電型スピーカーとして発売されました。
極めて優れた能力を有する Quad ESL ですが使用するにあたって注意しなければならない点があります。新型では随分改善されたようですがこのスピーカーを十全にドライブするには、音色や音質の再現性の確かさについては定評通りで、負荷変動に対しては強いパワーアンプが必要になります(場合によってはインピーダンスがかなり低くなり電源部に余裕の無いアンプではプロテクターがしばしば作動します)。背面からは逆相の音が出るので設置する位置にも敏感に反応し、特に壁面からの距離はとても重要で設置には注意深さが求められます。しかしその様な点を補っても余ある魅力と能力を秘めた素晴らしいスピーカーであることに変わりなく、当店では Quad ESL の魅力を余す事無くお聴きいただけます。
当店が現行ではなく前モデルを使い続けているのには、ESL の耐久性に対する風評を覆したいとの思いからです。使用開始から少なくとも6年以上を経ていますが、今のところ故障知らずで経年による劣化と思われる事象は発生していません。ESL を使ってみようとお考えの方には、先に書いた中にあるようなちょっとした気遣いでトラブルが避けられることを参考になさっていただくと宜しいかと。