Digital Sound

自分の部屋で音楽を聴く時は今でもアナログレコード派の私です、そんな私でさえ最早デジタル抜きでのオーディオは考えられません、時代の趨勢は確実にデジタルに移っています。そんなご時世にもかかわらず定期的に新聞や雑誌にアナログレコードのことが取り上げられたり、イベントとしてレコードコンサートが催されたりと、結構人気と云うか話題のアイテムになっているようです。今まで世間では終わったメディアのような扱いを受け不遇をかこっている体のアナログレコードですが、実際には廃れるどころかよりコアなミュージックツールとして今も脈々と息づいています。けれどもアナログレコードは数少ない例外を除けば一時代前に録音された音源で音楽を鑑賞するメディアなのです、これからの時代の音源の本流はCDから始まったデジタルコンテンツに確実に移っています。それはレコードで音楽を聴くのが好きな私ですら、新譜を聴きたい時にはデジタルメディアのお世話にならざるを得ないことからも自明です。

ここに来てアナログレコードが何故こんな風に話題になるのか、それは単なる滅び行くものへの挽歌かノスタルジーなのか、若い人達には知られざるポテンシャルへの興味がそうさせるのかどうかは分かりません。確かなことはデジタルオーディオが生まれたことによってハードウェアの進歩があり、その恩恵でアナログレコードの再生能力が格段に向上したことが挙げられるでしょう。デジタルオーディオが生まれたことによってアナログレコードが生き返ったと言い換えても良いと思います、そして新たな息吹を取り戻したアナログレコードは再びデジタルオーディオの先を行く音楽再生を取り戻しています。

前置きが長くなりました、ここからは再生だけを行う側の私が感じた現在のデジタルオーディオの再生の問題点を考えてみます。ここでお話しすることはザンデンオーディオの機器類の様に、各デバイスから放射される電磁的ノイズなどは既に対策を終えていることが前提になります。

それでは CD に例をとってみましょう、その再生周波数帯は 20Hz-20kHz と決められていてその帯域以外はすぱっとフィルターでカットされていると云うことになっています。そしてノイズも同様に綺麗に消し去られていることになってはいるのですが、そんなに上手く行っているのでしょうか。

ここからは少々乱暴な話で恐縮ですが、その聴こえなくしたノイズについてお話しします。「ノイズシェーピング」この言葉はカタログでも良くでてくる言葉ですが、可聴帯域を含む全ての帯域にあるノイズを消すのではなく、はるか高い帯域にまで追い上げて無かったことのようにする技術を指します。これほど高いところにまで持って行ったのだからまさか 20kHz なんて云う低い周波数帯域で聴こえるはずが無い、なんて気楽なことを言って安心した結果があのCDの音でした。たしかにノイズ然とした音は聴こえてはきませんが、どこか不自然なそれでいて輪郭のくっきりしたようなサウンドを聴くにつけ長時間の鑑賞が堪え難いものとなり、 CD の音はもう一つだなんていう声が上がりデジタルオーディオ全体の評価を下げることとなりました。

そんな音が悪い CD をなんとか聴けるようにする対策と称して、効能書き通りの効果を得る迄には至りませんでしたが、信号経路の途中にトランスを入れたり光伝送したりと、もうそこにはあるはずの無いノイズの遮断を目的としたデバイスが用いられていました。邪魔な物はノイズシェーピングと云う伝家の宝刀で遥か彼方に追いやってしまったんだから後はスペック通り上手く行くはずなのに、このスムースネスに欠けるサウンドしか出ないのは何故という疑問が起こります。原因はそのノイズシェーピングに使用されているローパスフィルターにありました。

実はこのローパスフィルターには位相を遅らせると云う性質があり、使用される段数に拘らず帯域の位相特性を変化させてしまいます。つまりこのフィルターを通ることで例えば20kHz以下の信号にも度数は僅かですが遅れを生じさせてしまいます、それが録音時の正確な再現を阻害している原因です。現在のデジタルオーディオに於いては録音から再生までローパスフィルターが使用されており、この問題が解決されるまで本当のデジタルサウンドを聴くことが出来ないのかもしれません。

そうは云っても CD などの音源を聴かずに済ませられない今、この現状で少しでも良い状態で音楽を聴くことは叶わぬことなのでしょうか。未だ再生機器のメインを担っている CD プレーヤーなど光ディスクの再生機器のウィークポイントは、ズバリ光学ピックアップにあります。高速回転するディスクのピットに照準を合わせるためレンズはサーボによっていつも動き回りその動揺が音質の劣化を招いています。その点に関しては完璧とは云えないものの遥かに優秀な非接触型の DAP を使って聴き比べれば明らかで、CDプレーヤーによる再生と同じディスクをリッピングした固体メモリーの DAP での再生してみるとその違いが分かります。このことからレンズの動揺がレコードプレーヤーのワウ程ではありませんが、比較的低い周波数帯に於ける機器類の振る舞いも音質の劣化の原因になっていることは否めません、この他にも分かっていないことがまだまだありそうです。

ここまで書いてきて悲観的材料の多さにめげて疲れました、この辺りで一度水入りにしましょうか。

オーディオシーンに CD が登場してから30有余年が経ったいま、デジタルに対するノウハウも増え実際のところはデジタルサウンドもまあまあ聴けるレベルに近づいて来たように思える時もあります。そんな今対症療法ではありますがデジタルサウンドを劇的に改善するデバイスがあります。それは当店が扱う製品の中でも隠れファンの多い Zaden DSC-1 というアイテムで、これはフィルターの一種ですが使用方法はトランスポートと DAC の間に繋ぐだけの簡単なものです。これは説明を尽くすより当店視聴室にて体験していただく方が理解し易いと思います、その期待を裏切ることはありません。

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2013/12/10